Power Platform支援で気づいた "AIが成長を止める瞬間"

生成AIの活用が当たり前になった今、開発スピードは確実に上がりました。
ただ一方で、育成の現場では「成果物はできているのに、本人の力になっていない」と感じる場面もあります。
今回は、Power Platform支援の現場で実際に感じたことをもとに、AI活用と成長の関係について整理してみます。

🔍 成果物はできているのに、成長していない違和感

先輩:「このロジック、どういう意図で書いたの?」

後輩:「えっと......AIで出したコードを入れたので、細かいところまでは......」

こんなやり取り、最近少しずつ増えていませんか? 生成AIを使えば、コードや数式、ロジックのたたき台を短時間で作れるようになりました。
私自身も実務の中で活用していますし、便利なツールだと感じています。

ただ、後輩の育成に関わる中で、少し気になることがありました。
それは、「アプリは作れているのに、本人の理解が追いついていない」 と感じる場面があったことです。

🧩 ペアプロで見えた「書ける」と「理解している」の差

後輩のOJTを担当したときのことです。
提出された成果物だけを見ると、コード自体はきちんと書かれていました。
アプリも問題なく動いており、最初は特に違和感はありませんでした。

しかし、ペアプロをしていると少しずつ気になる場面が出てきました。

  • その場でコードを書こうとすると手が止まる
  • ロジックについて質問すると、うまく説明できない
  • エラーが起きたときに、原因を追う動きが弱い

以前は普通にコードを書けていたはずなのに、なぜか今は書けなくなっている。
少し不思議に思い、理由を聞いてみることにしました。

💡 原因は、AIの答えをそのまま使う習慣

話を聞いてみると、答えはとてもシンプルでした。

AIで出力されたコードを、そのままコピペしていたのです。

一見すると、これは非常に効率的です。
実際、短時間でそれらしいものを作ることはできます。 ただ、そのやり方には大きな落とし穴がありました。

⚠️ 本当に問題だったのは、"考える部分"をAIに渡していたこと

表面上は作れていても、実際にはこんな状態になっていました

  • ロジックを説明できない
  • エラーの原因を追えない
  • 仕様変更に対応できない
  • 自分で実装方針を判断できない
  • 似た場面で応用して作り直せない
つまり問題だったのは、コードを書いていないことではありません。
「考える部分」をAIに任せてしまっていたことです。

生成AIを使うこと自体が問題なのではなく、 思考までまとめてAIに預けてしまうと、理解・修正・応用の力が育ちにくくなる
それが、OJTの現場で起きていた本質だったのです。

🛠️ そこで、あえて「AIを使わない期間」をつくった

そこで、ある後輩に対して、試験的に思い切った取り組みを行いました。

「一定期間、生成AIの使用を完全に禁止する」

期間は約半年間
CopilotやChatGPTなどの生成AIは使わず、次のことを前提に取り組んでもらいました。

  • 公式ドキュメントを調べる
  • 既存の仕様や挙動を自分で確認する
  • 自分で考え、試し、失敗する

目的は、AIを否定することではありません。
基礎的な思考力と理解を、一度しっかり身につけてもらうことでした。

✨ 結果:AIを手放したことで、考える力が戻ってきた

正直なところ、最初は不安もありました。
生産性が落ちるのではないか。モチベーションが下がるのではないか。

しかし結果として、その後輩には明確な変化が見られました。

  • エラーが起きた際に、自分で原因を追うようになった
  • 実装の理由を言葉で説明できるようになった
  • 設計や構造についての質問が出るようになった
  • 単なる「動く」ではなく、「なぜそうするのか」を考えるようになった

いわゆる「自走できる状態」に近づいたと感じています。

📘 なぜAIを使わない期間が、成長のきっかけになったのか

この経験から、次のように考えるようになりました。
生成AIは非常に強力な支援ツールです。ただし、基礎的な理解が十分でない状態で使うと、
「なぜそうなるのか分からないまま、答えだけを使う」 という状況が起きやすくなります。

特にPower Platformのように、内部処理が見えにくく、一見簡単に作れてしまう一方で、
設計や構造が重要になる領域では、考えるプロセスそのものが技術力に直結する と感じています。

生成AIは答えを出してくれます。
しかし、考え抜いた経験そのものを代わりに積み上げてくれるわけではありません。

🔗 生成AIそのものが悪いわけではない

ここは誤解のないように補足したい部分です。
生成AIは、実務において非常に有用なツールです。
一定の基礎力が身についた後であれば、次のような場面で大きな力を発揮します。

  • 実装速度の向上
  • 抜け漏れの防止
  • 発想の補助
  • 選択肢の比較
  • ドキュメント作成の下書き

問題は、「使うか、使わないか」ではなく、「いつ、どのフェーズで使うか」 だと思っています。

📋 育成で大切なのは、AIを使う"順番"だった

今回の経験から、育成においては次の順番が重要だと感じました。

初期フェーズ

まずは生成AIに頼りすぎず、自分で考え、試し、詰まる経験を積む。思考の筋力をつけることが最優先です。

中間フェーズ

設計意図や実装理由を自分の言葉で説明できることを前提に、生成AIを補助的に使う段階です。

実務フェーズ

基礎が身についたうえで、生成AIを前提に生産性と品質を高める。この段階ではAIは非常に強力な武器になります。

👉 AI時代の育成では、「考える時間」をどう守るかが重要になる

生成AIの活用が進む中で、「人を育てる」という観点では、これまでとは違う設計が必要になっている と感じます。
本気で詰まり、試行錯誤し、それを乗り越えた経験があってこそ、技術は自分のものとして身についていきます。
生成AIは非常に便利です。ただ、その過程を一度も経験しないままでは、技術が本当の意味で積み上がらないこともある。
今回の経験を通して、そのことを強く感じました。
便利なツールだからこそ、一度は自分の頭だけで考え、つまずき、理解する時間をどう確保するか。
その順番を意識することが、結果として人と組織の力を高めることにつながるのではないでしょうか。

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